4-5 竜樹

 阿含経の中で説かれている〝無我〟や〝縁起〟は「非有非無」の中道を支える法理ですがここでは十二因縁からなる因果律(実体思想)で縁起が説かれている為、実体思想(モノの有る無し)で中道を理解することになります。

〝中道〟を正しく理解するには、実体思想から抜け出ることが重要です。

 時代が、正法時代の後期になると竜樹(ナーガールジュナ)が登場し、般若心経で説かれる〝空〟の法理を解明して小乗の誤った中道(縁起)解釈を正し、空の理論を用いてお釈迦様が示した中道(非有非無)の真理を『中論』という論書にまとめ上げました。

 その『中論』の二四章一八偈で竜樹は次のように述べています。

「我等は縁起せるものを空と説く。それは仮説(仮の名)であり、また中道である」(正蔵三〇・三三中)

 縁起によって生じるモノには実体がなく(無自性)、実体がない故に空(中道)なので「縁起→無自性→空」となって竜樹の空理は、「空=中道」の次のような構図になります。

 <空の定義>
  無=非存
  有=存在
  空=非有非無=縁起=中道

 そしてモノの見方を、主観・客観・空観として、真諦と俗諦の二諦説としました。

 <空観の意味>
  俗諦=(世間法)=主観と客観
  真諦=(仏法)=空観

 そして、この空観に析空と体空の二種があります。

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